ぐるなBB

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全国大学ラグビーフットボール選手権 20200111 決勝 明治対早稲田

大学の頂点を決める闘いが、東京五輪2020を前に完成した新国立競技場で行われる。

前年度覇者の明治と、その明治に対抗戦リーグで敗れたものの前年度準優勝の天理を下した早稲田との対戦、いわゆる『早明戦』が優勝の椅子をかけて闘うのである。

5番・箸本を中心に運動量と圧力の強いFW、10番・山沢を中心に攻撃が展開し、両WTBに脚の速い選手を揃える明治、対する早稲田は9番・齋藤、10番・岸岡のゲームメイクから、個人技が光るFW、そして怪我から復帰した12番・中野が攻撃の起点となり、明治に対抗する事が出来るか。

 

前半、ペースは早稲田が圧倒的に支配した。

明治は度重なる攻撃を仕掛けるが、早稲田のDFラインは鋭く、横へのパスも後ろへのパスも素早く反応し、ゲインラインを突破するどころか、後退させられてしまう。

セットピースでは明治がスクラムで押し勝ち、ラインアウトでもモールに絡み、優位に立つかと思いきや、早稲田はしぶとくマイボールをキープし、攻撃を展開していく。

 

先制は、早稲田の15番・河瀬が明治DFラインを切り裂くと、連続攻撃からハイタックルが偶発され、ペナルティキックを9番・齋藤が落ち着いて決めた。

続いてオフフィートでのペナルティから明治陣内深くのラインアウトとなり、近場の攻撃から順目と見せて逆目に目一杯振り、12番・中野が外側に開いてDFを呼び込み、空いた大外の8番・丸尾にラストパス、先制トライを挙げた。

その後は拮抗する展開も見られ、明治は10番・山沢がキックにタックルに奮闘、両WTBの山村・山嵜のラン、5番・箸本らにボールを集めるも、早稲田DFはやはり崩れない。

 

明治陣内ラインアウトから12番・中野をダミーにして13番・長田にパス、元々東海大仰星時代はWTBで全国を制覇した長田のトップスピードを明治は止められず、スワーブで 1対1も躱してトライを重ねる。

早稲田は連続攻撃から左サイドを攻め、数的優位を作った状況で12番・中野が敵を引き付けてオフロードパス、8番・丸尾と11番・古賀が攻め込み、オフサイドで得たラインアウトから早稲田が明治の小門を奪うモールでトライを奪う。

前半最後のトライは、センターライン付近のスクラムを明治に押されながらも早稲田が左に展開、10番・岸岡がタイミングをずらして前が空いた13番・長田にパス、さらに外を走る11番・古賀が切り込み、最後はポイントから横に開いた6番・1年生相良がパスを受け取るとステップでDFラインを撹乱し、無人のDF裏を駆け上がり0対31で折り返した。

 

後半、明治が巻き返しを図る。

早々から早稲田陣営に猛攻を仕掛け、明治はFWやポイントから近い位置での攻撃が有効でないと見るや否や、ボールを両翼まで大振りし、ダイナミックなアタックを見せ、快速WTBが突破を図り始める。

早稲田陣左側でのラインアウトからやはりBKが大外展開、15番もライン参加して反対側の14番・山村までボールが渡ると、最後はタックルを受けながら早稲田陣右タッチラインギリギリで体を目一杯伸ばし、テレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)にて右隅のトライが認められた。

 

明治はさらにようやく目を覚ましたかの様に攻撃し、両側での攻撃展開で早稲田のDFラインがやや開き目になったところを、明治10番・山沢は見逃さない。

ボールがこぼれめややアンストラクチャーな状況になると、拾い上げた10番・山沢が縦突破を図り、倒れ込みながらもサポートに走った5番・箸本へオフロードパス、追いすがる早稲田DFを振り切り、トライを挙げた。

さらに、左側展開で攻めた明治は14番・山村がボールを早稲田陣まで運ぶと、逆目展開からまた大外に振ると見せ、10番・山沢がパスダミーとスピードを維持したままのステップで早稲田DFラインを突破、無人のゴールへボールを運んだ。

 

流れも会場の雰囲気も、猛追する明治の背中を押し始める。

昨年からレギュラーでいた11番・山嵜は元々スピードと決定力に定評があったが、体はさらに厚みを増して接触にも強くなり、右側大外展開でパスをもらうと、体をぶつけながら1人を交わし、そのままスピードを落とさずに右側を駆け上がり、今ゲームでも再三酷使した脚を攣りながら、学生生活最後のトライを挙げる。

さらに昨年の決勝、1年生で15番に抜擢された雲村がその後不動のレギュラーとなり、上背はあったが線は細かった昨年と比較して体は一回りも大きくなり、その体格に似つかわしくない柔らかいステップと正確で長距離のキックも持ち味だが、この試合でも大外展開の最中に最後尾から再三ライン参加し、外までパスを回さずに空いたスペースに飛び込み、トライも挙げていた。

 

前半0点であった明治は後半だけで35点を積み上げ、前年度覇者の維持を見せるが、大学王者としての貫禄を見せつけたのは、やはり早稲田だった。

明治が追いすがる中でもチャンスがあればトライを奪いにいき、BKとFWが一体となった連続攻撃で明治陣内に食い込み、2秒とかからないブレイクダウン、素早い球出しで明治DFの整備を許さず、10番・岸岡がプレーヤーの位置を瞬時に把握し、最後は左隅を走る11番・古賀が滑り込んだ。

また、脳震盪や脚の攣りで選手が多数交代した直後、センター付近のマイボールスクラムから8番・丸尾が右側アタック、外展開と見せてステップでラインブレイクをすると、最後は右側を走る14番・桑山にラストパス、ダメ押しのトライを挙げ、後半で14点を追加した。

 

最終スコアは35対45、帝京の連覇、明治の復活という年月を経て、11年ぶりに早稲田が優勝を果たした。

1年生から活躍していた9番・齋藤、10番・岸岡、12番・中野、14番・桑山らが4年での集大成を見せ、さらに年々加入してくるタレントらが力を合わせ、素早い展開と確実な判断、明治を抑えるための入念な準備、そして早明戦で7対33という惨敗を経ての逆襲に念が込められていたのだろう。

明治は昨年の覇者であり、対抗戦も全勝優勝と隙がない様に見えたが、ラインアウトでマイボールを失う機会が多く、前半に早稲田を勢いつかせたところが最後まで響いただろう。

 

大学生という20歳前後のプレーヤーがひしめく中で、ハイレベルなプレーも散見された。

両チームのプレースキッカーである早稲田9番・齋藤、明治10番・山沢は、互いに7本、5本というキックを難しい角度も構わず全て成功している。

早稲田10番・岸岡のパス、キックのスキルは元より、味方を活かす眼や判断は他チームの脅威であるし、12番・中野はサイズがあり、ボールを持つと走って良し当たって良しパスして良しと相手を引き付ける力が強く、そこを活かして味方のチャンスやトライを演出した。

 

こうした闘いの中から日本、そして世界で活躍するプレーヤーも見えてくる。

先の花園で活躍した選手が大学で輝く事もあれば、大学で花開く選手もおり、4年間の中で体もプレーも進化していく過程見るのも楽しみではあるし、今後を想像するのも楽しみである。

何より、伝統の一戦とも呼べる早明が大学頂点をかけて闘う様を、新たに生まれ変わった国立競技場で送り届け、それを大勢の観客が見届ける、これほどラグビーに愛を注がれる試合であった事、それが何よりも素敵な事であった。