ぐるなBB

宮城県在住であるBBの主観が渦巻く日常観察バラエティ

ラグビーワールドカップ2019『20191101 3位決定戦 ニュージーランド対ウェールズ』

ニュージーランドはRWC2011以降世界ランク1位を守り続けていたが、アイルランドとのテストマッチで敗戦を重ね、ついにその座を陥落、しかしRWC2019では安定した闘いを見せ、再び世界ランク1位に躍り出ていた。

ウェールズは6ネーションズ2019でグランドスラムを達成し、イングランドアイルランドを退け、世界ランク1位でRWC2019に殴り込み、途中でニュージーランドに抜かれたが、オーストラリアやフランスと言った国々を着実に退けてきた。

準決勝でニュージーランドイングランドの堅守に敗れ、ウェールズ南アフリカのフィジカルに屈し、特に3連覇を逃したニュージーランドにとっては失意の中での試合となった。

 

ニュージーランドはハンセンHCが、ウェールズはガットランドHCが退く意向を示し、またニュージーランドは8番・リード、ウェールズは5番・AWジョーンズといった100キャップ以上の活躍をみせ、今大会は共にキャプテンとしてチームを牽引してきた2人にとっても、これがおそらく代表引退試合であった。

ニュージーランドは主戦で活躍したテイラーやサヴェア、ペレナラ、若いWTBのリースやブリッジは温存し、コルトマンやフリゼルウェーバー、イオアネと言った選手を連ねた。

対するウェールズは主力が尽く怪我で離脱、ウェインライトやナヴィディと言ったバックロー、リアムウィリアムズやノースと言ったスリーバックスに変わる若い選手を並べ、中には1キャップで緊急招集された14番・レーンの姿もあった。

 

試合は終始ニュージーランドのペースで進んでいく。

10番・モウンガ、15番・BBのダブルフライハーフは速く広い攻撃範囲を展開し、12番・SBWや13番・クロティらのBK陣による縦突破やオフロードパスで効果的に前進を図っていく。

先制トライはモウンガからのオフロードパスを受けたリード、そして4番・レタリックへと渡り、最後はオフロードパスを受けた1番・ムーディーがウェールズ15番・エイモスを振り切って飛び込んだ。

 

ニュージーランドは9番・アーロンはポイントサイドを持ち出して周辺FWを撹乱し、綻んだDFラインを強力FWがこじ開けると言った展開を重ね、ウェールズDFに躊躇を生む。

スクラムから8・9攻撃で左サイドを駆け上がると、中央から右展開すると見せかけて15番・BBとシザース、DFを華麗に突破して続けてトライをした。

さらにはベテラン14番・ベンが、DFが固まる狭いスペースを巧みなステップで交わしてトライ、前半終了間際には右ラインアウトでのモールから左に展開するとみせ、アーロンが左サイドへ矢の様なパス、待ち受けたベンがハンドオフで交わしながら2本目のトライを挙げた。

 

ウェールズは堅い守りもお墨付きだったが、ニュージーランドの素早い攻撃に受け身となり、特にブレイクダウンで9番・アーロンにプレッシャーをかけられず、様々な攻撃オプションを与えていた。

それでも得意のハイボールパントを巧みに奪取し、ニュージーランドの反則から敵陣へ前進すると、最後はアンストラクチャーな展開から10番・パッチェルが15番・エイモスへパス、数的優位を作ってDFラインを崩し、そのままトライラインへ飛び込んだ。

また後半にはニュージーランド陣内での時間も増え、FWの連続攻撃でトライライン際を攻めると、最後は今大会トライランキング独走中の11番・アダムスが、屈強なFWが待つポイントサイドに体をねじ込んで7本目のトライを挙げた。

 

それでも、ニュージーランド優勢は変わらなかった。

素早く広い攻撃は最後まで有効であり、SBWが突進して隙間を空けたDFラインを、クロティが見逃さず、走り込んでは“オフロードパス”の代名詞とも呼べるSBWから華麗なオフロードパス、クロティがそのまま飛び込んで追加トライ。

またスクラムでは序盤に反則を重ねたニュージーランドだったが、後半はウェールズ側の反則を誘って優位に立つと、中央付近でスクラムを押し込んでDFラインを下げたところ、21番・ウェーバーからモウンガへパス、23番・ジョルディと2対2のシチュエーションを作ると、モウンガがパスダミーやステップからそのまま飛び込んだ。

 

結果は40対17、ニュージーランドの完勝に近い形で試合は終わり、その圧倒的な攻撃力を示した他、その攻撃を“無”としたイングランドの鉄壁DFの凄まじさを痛感した。

ウェールズは怪我人による戦力ダウンは否めないものの、BK展開力では内側・外側でラインブレイクを重ねる場面も多々あり、またハイボールの精度や攻防のテクニック、重量FWによる突破や、3番・ルイスの135kgでの華麗なステップ等、攻撃力の高さは流石ではあるものの、その攻撃を食い止めたニュージーランド南アフリカのDF力も流石なのだろう。

かくして3位はニュージーランド、4位はウェールズとなり、世界の戦力図は時代と共に変わって来ているのである。

 

ラグビーワールドカップ2019も残すところ決勝戦の1試合のみとなり、今夜現在世界No.1が決定する。

2003年大会決勝と同じ顔合わせ、前回ホスト国にも関わらず予選敗退、隙の無いクレバーな闘いを見せるイングランドか、前回日本に歴史的敗戦を喫し、破壊力を磨いて来た南アフリカか、勝利の女神ならぬ大和撫子はどちらに微笑み、流し目を配るのだろうか。

全く予想が出来ない決勝戦、瞬きすら躊躇う試合が待っている。