ラグビーワールドカップ2019 『20191005 日本対サモア』
ラグビーワールドカップ2019も予選は後半戦に入り、日本は3戦目としてサモアと対戦した。
前戦でアイルランドから歴史的勝利を挙げた日本は、出番が少ない2番・坂手にチャンスを与え、バックローはロシア戦同様のリーチ、ラブスカフ二、姫野、BKはアイルランド戦同様の布陣となり、リザーブには19番・ウヴェ、20番・ツイらが新たにメンバー入りした。
サモアは前戦でスコットランドに0封され、11番・フェドーがイエローカードを2枚貰うも、今戦出場可能、FWには高さや重さを兼ね備えた選手が揃い、BKは15番・ナナイウィリアムスが後ろに陣取り、そしてサントリーでも永らく活躍したトゥシピシはリザーブに入った。
サモアの試合前儀式“シヴァ・タウ”が披露され、日本ファンで埋め尽くされた豊田スタジアムだが物々しい雰囲気となり、試合が始まる。
日本のゲームプランはシンプルであり、常に点数をリードし、サモアの攻撃パターンを限局化し、焦ったところで反則やターンオーバーを狙い、空いたスペースに走り込んでトライを取るという事だった。
そのため、序盤はトライが狙える位置でも徹底してペナルティゴールを選択し、10番・田村がポールの間を通していった。
しかし、サモアもワールドカップ常連、ヨーロッパリーグで活躍する選手も多い中、易々と日本のシナリオに沿うわけではなかった。
巨躯をぶつけて日本のアタックを止め、ブレイクダウンでは素早い寄りと腕力でノットリリースザボールを次々と奪い取り、日本のチャンスを潰しながら、12番・タエフが華麗にペナルティゴールを決めていった。
リードしたい日本だが、9対6とその差は3点、焦っているのは日本の様で、キックミスやハンドリングエラーが垣間見え、ルーズボールへ反応はサモアに遅れをとり、ビッグゲインを図られるシーンもしばしばあった。
流れを手放してしまったのはサモアであり、7番・イオアネが松島に対する危険なタックル(アフター&ノーバインド)でイエローカードを貰い、さらに15番・ナナイウィリアムスが脳しんとうの疑いがある
との事で一時交代したが、結局そのまま交代となってしまった。
日本は松島、レメキといったWTB陣がスピード溢れるランを試み、サモア陣ゴール前まで進むと、最後はサモア出身の13番・ラファエレが綻んだサモアDFラインへ切り込み、トライを奪った。
前半は16対9と何とかリードしたが、サモアからすれば1人少ない状況でもペナルティゴールで加点出来、後半に望みを繋げたところだろう。
後半には22番・トゥシピシが入り、サモアの最年長記録を更新、そして前半同様にタフなタックルとブレイクダウンでペナルティゴールを挙げ、その差は4点となった。
日本はボーナスポイントである4トライも目標にしたいところだが、まずは眼前の勝利を手にする事を最優先に、同様にペナルティゴールを重ねる。
待望の瞬間は後半中盤、サモア陣ゴール前左ラインアウトからモールを組み、ジリジリと押し込んで最後は8番・姫野がグラウンディング、キックも決まって24対12となった。
ところがサモアも諦めず、ペナルティから陣地を奪うと、最後はラインアウトモールと見せかけての突進、そしてこの日再三ゴールや良いタックルを見せていた12番・タエフが、前回大会の山田章仁がサモア戦で見せた“忍者トライ”の様に反転しながら23番・福岡のタックルを掻い潜り、チーム初トライを挙げた。
負けても7点差以内であればプール敗退とならないサモアは、執拗に食らいついていく。
終盤、リザーブの21番・田中が百戦錬磨の好タックルを見せ、さらに17番・中島、18番・ヴァル、19番・ウヴェ、20番・ツイも良いボールキャリーを見せ、敵陣深く攻め込んだ日本はFWでのゴリゴリ戦法から一転、BK大外へと展開し、23番・福岡が2戦連続のトライを挙げ、日本の勝利をほぼ確実にした。
さらに残り時間が少ない中、ボーナスポイントの1トライを奪いに、19番・ウヴェがターンオーバーをし、13人モールで奪いに行くが、結局サモア陣ゴール前でのスクラム合戦となった。
望みを繋げたいサモアは、試合を終わらせる事なくスクラムを組み続けるが、修正した日本のスクラムは相手にプレッシャーを与え、奪取した後に外展開、最後はロシア戦でハットトリックを挙げた14番・松島が飛び込み、今大会4トライ目、ボーナスポイント獲得なる最後の1トライを挙げ、38対19で勝利した。
不安の残る闘いではあるが、選手のパフォーマンスが悪いわけではなく、各々の役割を全う出来ている。
言うなればハイパントへの対応がやはりずさんではあるが、予選最後のスコットランド戦までに修正を図り、悲願のベスト8入りを果たしてもらいたいものである。
試合が終わり、予選敗退が確定したサモアにいち早く駆け寄る日本選手、そして22番・トゥシピシを始めとしたサモア選手は笑顔と抱擁を繰り返しながらユニフォーム交換を行い、激闘を称え合う“ノーサイド”となった。