ぐるなBB

宮城県在住であるBBの主観が渦巻く日常観察バラエティ

ラグビーワールドカップ2019『20190922 アイルランド対スコットランド』

予選プールAにおける大本命同士の対戦、今大会の予選においてもニュージーランド南アフリカに勝るとも劣らないカードである。

世界ランク1位(試合前)で臨むアイルランドは、これまでワールドカップでベスト8が最高位という点、そして監督が今大会を最後に引退するという点からも、今大会に賭ける熱意は一入である。

また世界ランク7位(試合前)、前回大会の準々決勝で悲運な判定も敗れたスコットランドは、シックスネーションズでも知り尽くしながらなかなか勝ち上がれない強国にどう立ち向かうか、盤石ではあるが、勝てば決勝トーナメントがグッと近付く大一番なのであった。

 

アイルランドは強力なFWが売りであったが、近年は北半球最高のハーフバックス団との呼声が高い9番・マレーと10番・セクストン(2018年世界最優秀選手)のセットアップが光り、BKにも力強いメンバーを育て上げてきた事から、外に展開するラグビーも培われてきた。

だからといってFWが軟弱なワケはなく、120キャップを誇る2番・ベストや最強3番・ファーロング、バックローにも力強いランナーを揃えている。

強力FWにBK展開も備わった最強チームは、ニュージーランドテストマッチ連勝記録を止めた他、近年の対戦では勝ち越しており、優勝候補最上位に登りつつある。

 

スコットランドは前回大会後、序盤こそ結果に現れなかったが、徐々にその力を示し始めている。

選手は前回大会を経験するベテランメンバーに円熟さが増し、BKには10番・ラッセルを始めとした若手も経験を積み、近年はシックスネーションズでもイングランドアイルランドウェールズと拮抗する試合を展開し、上位国を脅かす活躍をみせている。

そんなスコットランドは9番・レイドローや先のラッセルを中心として、多色のFWや走力あるBKを織り交ぜた多彩な攻撃が魅力であり、特にスリーバックスは北半球最高の異名も持ち、その決定力に注目が集まる。

 

試合は、アイルランドの強さが際立ったものだった。

雨でフィールドやボールが滑る中、序盤はアイルランドのハンドリングエラーが目立ち、スコットランドがボールを支配し、攻撃し続ける。

しかし、その行手を阻んだのはアイルランドの強固なDFだった。

綺麗な隊列はまるで壁であり、スコットランドの攻撃陣形とパスの軌道から狙い澄ましたかの様な素早い出足と強烈なタックルはまるで槍だった。

特に10番・ラッセルへのプレッシャーは強く、その後のBKへの有効なパスは封じられ、余儀なくされたキックで陣地の獲得を防がれた。

 

アイルランドは攻撃も前半から飛ばした。

ブレイクダウンから4番・ヘンダーソンが巧みに抜け出してゴールラインに迫ると、ポイントサイドを連続で攻め、最後は5番・ライアンがねじ込んだ。

続けてペナルティを得てから敵陣ゴール前でのラインアウトを獲得し、右に左にと捉えどころのないドライビングモールで前進し、最後は2番・ベストがタックルを受けながらも地面に押し込んだ。

 

溢れたボールを自陣前まで蹴り込まれ、スコットランドの15番・ホッグが懸命に追うが、ボールはゴールラインを割るかと思いきや無情にもポストカバーに当たって跳ね返り、ホッグは瞬時に反応するも、タックルを受け、泣く泣くキャリーバックからスクラムを献上した。

そのスクラムから8番・スタンダー(この試合のMVP)が鋭い突進を図り、執拗にFWで攻め、最後は3番・ファーロングがDF2人の間を豪快にこじ開けた。

スコットランドは9番・レイドローのPKのみで、19対3とアイルランドペースで前半を終えた。

 

後半はさらに雨脚が強まるも、次第にスコットランドBKが躍動し、特に15番・ホッグがサインプレーやキックカウンターから再三の突破をみせた。

アイルランド陣地に攻め込む事も多くなるが、あと一歩のところでハンドリングエラーやターンオーバーに見舞われ、トライを挙げる事は出来なかった。

アイルランドは前半こそハンドリングエラーが目立ったが、後半はほとんど見せず、逆に少ないチャンスから好機を作り出した。

9番・マレーがスコットランドDFを嘲笑うかの様に裏側の手薄な付近に何度もパントを蹴り込み、スコットランドは対応に追われてマイボールは奪取するがら有効な攻撃は封じられた。

 

そして後半は10番・セクストンのゲームメイクも光り、BK陣がスコットランドDF網を突き破り、ラインブレイクしてチャンスも演出した。

そして9番・マレーの裏側パントをスコットランドが弾き、セカンドボールを奪取したアイルランドは、DF陣形が揃わないと見るや、外側で張っていた14番・コンウェイにすかさずボールを提供し、身軽にタックラーを交わしてチーム4本目のトライを挙げた。

最後10分はシン・ビンにて1人足りないものの、スコットランドの攻撃を食い止めら27対3で勝利した。

 

このDFシステムに破壊力ある攻撃に、日本がどうして太刀打ちできよう。

そしてスコットランドも敗れたとは言え、後半の勢いやスリーバックスの走力はかなりの脅威であり、それにFWもスクラムからの集散、ブレイクダウンへの参加率やスピード、キックDFなどは素晴らしかった。

日本DFがこのスコットランドの攻撃を食い止められるか、見ものである。

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実は現地観戦したのだが、プレーで1番驚いたのは、パススピードだった。

一瞬にしてボールが端から中央、そして端へ行く。

またボックスキックの精度も非常に素晴らしく、あのコンディションの中で非常に正確でいやらしいところ、そして受ける面々も鬩ぎ合いの中でボールを獲得するのであった。

DFシステムやタックル、ボールキャリーも流石だが、基本であるハンドリング、または判断から実動までの躊躇の無さ、動きの精度、瞬間瞬間の反応、実に見応えがあった。

 

72000人収容のスタジアムに67000人余りが詰め寄り、ややアイルランドが多い印象を受けた外人様の大部隊、中には自分も含めて兜ジャージで観戦する日本人の多さに圧倒された。

永遠と並んでいるかの様なフードやビール、そしてトイレの列、特に男性が多いせいか女性用トイレとは雲泥の差であり、催した時には遅いのかも知れない。

そんな貴重な経験を目の当たりにしながら、日本でワールドカップが開催される有り難さを、改めて感じたのであった。