ぐるなBB

宮城県在住であるBBの主観が渦巻く日常観察バラエティ

ラグビーワールドカップ2019『20190921 ニュージーランド対南アフリカ』

予選プールの再注目カード、過去に優勝3回、現在2連覇中の世界ランク2位ニュージーランドと、優勝2回、世界ランク4位の南アフリカとの一戦である。

2015年イングランド大会では日本に予選プールで屈辱的敗退を喫した南アフリカだが、順当に勝ち上がって準決勝まで駒を進め、圧倒的実力を誇るニュージーランドと対戦し、その城壁を崩す事は叶わなかった。

それでも3位決定戦でアルゼンチンに勝利し、面目を一応保ったまま大会を終えたが、世界からの視線は厳しいものであった。

 

その後、ニュージーランドは主力ベテラン勢(マコウ、カーター、ノヌー、コンラッド、カイノら)の相次ぐ引退と、優勝に貢献したレギュラーメンバー(ジュリアン、ナホロ、フランクスら)に対する若手の台頭もあり、この4年間はメンバーが様変わりしながら熾烈なスコッド争いを繰り広げてきた。

特にバックロー、そしてBK陣は『スーパーラグビー』において活躍を認められたものから選出されるが、そのタレントの豊富さからスコッドに入るのは容易ではなく、最後の最後までメンバーは分からない状況だった。

最終的には世界最先端の“ダブル司令塔”を試行しながら、1-3-3-1ポッドシステムでどこからでも破壊力のある攻撃を仕掛けられる点に注目が集まる。

 

対する南アフリカは、テストマッチとは言えアルゼンチンやイタリアに敗れ、『スーパーラグビー』でも日本・サンウルブズへの配慮からチーム数の減少、そしてワールドカップ歴代最多タイのトライ数を誇るハバナらの脱退等、環境が整っているとは言えない日々が続いた。

しかし、2019年3月に就任した新ヘッドコーチによる対ニュージーランドDFシステムが徐々に構築されつつあり、素早い出足で相手の攻撃オプションを狭めプレッシャーを与える破壊的DFは、2019年の南半球大会『ザ・ラグビー・チャンピオンシップ』において、ニュージーランドとロースコアで引き分けるほどにまで成熟している。

先日20190906に行われた日本とのテストマッチにおいて、日本の準備した攻撃を尽く潰し、その大柄な体格とパワフルなフィジカル、そして2番・マークス、11番・マピンピ、14番・コルビなどの若手実力者の活躍もあり、汚名返上を果たせた南アフリカは準備万端状態で大会に臨むのである。

 

横浜国際総合競技場、72000人収容の日本最大スタジアムは満員に包まれ、ニュージーランド代表の民族的儀式である『HAKA』は、最も重要な闘いの時に披露される“カパオパンゴ”が行われ、この一戦が両国において、今大会において、全視聴者においてどれだけ重要であるかを決定付けた。

試合はまさに壮絶であり、フランス対アルゼンチンの意地や勢いをそのままに眺めるも、そのスピードとスキル、そしてフィジカルはその比ではなかった。

特にスピードにおいては先の試合よりも遥かに圧倒的であり、個人の脚力だけでなく、パス回しの華麗さ、ボールを取り巻く攻防、主導権の入れ替わり等、その展開の早さは圧倒的であった。

 

南アフリカは序盤から破壊的DFが完成度の高さを見せ、度重なる攻撃はゲインラインをさらに後退させるほどであり、ニュージーランドを自陣に釘付けにした。

しかし、その後攻撃の決め手を欠く南アフリカは、短く少ないパスでの突破を試みるもニュージーランドの高いタックルスキルに阻まれ、最終的にはパントを選択せざるを得ない状況になり、反則を誘ってPKを決めるほどのチャンスしかなかった。

その中でニュージーランドはキックパスなどを用いたポッドシステムが活き、14番・リースや6番・アーディ(ジュリアンの弟)が右ラインを突破する等、南アフリカDFラインに綻びを生じさせると、“ダブル司令塔”の効力である10番・モウンガから15番・ボーデンへパスが渡り、切れ込んだボーデンからオフロードパスを受け取った11番・ブリッジが最後は先制トライを決めた。

さらにアンストラクチャーな展開から2番・ディンがBK顔負けの走力とオフロードパスを見せると、受け取った13番・ALBが個人技でDFラインを切り裂き、最後はフォローに走った5番・スコッド(ボーデンの弟)が初トライを決め、先日の汚名を返上した。(2019年の『ザ・ラグビー・チャンピオンシップ』において前半にレッドカードをもらい、数的劣位からオーストラリアに大敗した事から、世界王者より陥落したと言っても過言ではない)

 

前半を17-3とニュージーランドリードで折り返すが、その中でも南アフリカの11番・マピンピ、14番・コルビ、15番・ルルーはその走力の凄まじさを見せたし、1番・キッツォフ、2番・マークス、4番・エツベス、8番・フェフミューレンなどは力強い攻撃を示していた。

後半はその14番・コルビが躍動し、170cm/80kgの小柄ながら“ポケットロケット”の異名を持ち、狭いスペースでも巧みなステップで交わし、前が空けば爆発的なランで陣地を獲得した。

敵陣深く攻め込んだ中、最後は7番・デュトイが相手の意表をつくポイント上の突破を図り、ゴール真下に飛び込んだ。

その後も10番・ポラードのドロップキック等巧技が冴えるも、ニュージーランドに追い付く事は出来ず、23-13で試合を終えた。

 

今大会最大の山場を終えた両国だが、この後の予選プールで星を落とす事は無いだろう。

決勝トーナメントでは日本のいるプールAの上位2国と対戦する事が決まっており、日本は1位通過なら南アフリカと、2位通過ならニュージーランドと相対する。

日本にとってはまずは予選プールだが、決勝トーナメントに行ったところで、どうしてこのチームに勝てるだろうかと絶望したしまう自分がいる。

 

とは言え、大会は始まったばかり。

何が起こるか分からない展開は前回2015年大会で日本が示してくれている。

これからもアツイ闘いから目が離せない。