ぐるなBB

宮城県在住であるBBの主観が渦巻く日常観察バラエティ

ラグビーワールドカップ2019『20191026準決勝 ニュージーランド対イングランド』

プールB1位のニュージーランドと、プールC1位のイングランドとの対決。

ニュージーランドは予選プールで南アフリカを退け、準々決勝では今大会最大のライバルとされたアイルランドを圧倒し、優勝候補筆頭として4強入りした。

イングランドは予選でフランスとの試合が雨で流れたが、準々決勝でもオーストラリアを後半に突き放し、これまでほぼ完璧に近いパフォーマンスを見せてきた。

 

2015年大会でホスト国ながら予選敗退という屈辱を味わい、ヘッドコーチにエディー・ジョーンズを迎え、4番・イトジェ、8番・ビリーヴニポラ、10番・フォード、12番・ファレル、13番・トゥアランギといった核となる選手を擁し、鉄壁のDFとシステム化した効率的なアタックを武器に、強いチームを作り上げて来た。

ニュージーランドはメンバーの入れ替わりを経て、10番・モウンガ、15番・バレットというダブルフライハーフと、7番・サヴェア、8番・リードらを含めた効果的なFWポッドシステムによる超攻撃型布陣を敷き、これまで試験的に行って来たプレースタイルが完成されつつあり、先のアイルランド戦でその破壊力を見せた。

2015年からの4年間、大会直前に両国は一度対戦し引き分けに終わっている事から、どちらに軍配が上がるかは正に未知数といったところである。

 

前半、開始1分でイングランドが早々にトライを決め、試合の主導権を握る。

ボールを得たイングランドは8番・ビリーヴニポラや13番・トゥイランギというパワーランナーがDFラインを押し下げ、1番・マコヴニポラ、3番・シンクラーを中心としたFWドギーやダブルラインシステム、そしてニュージーランドが苦手とする内側DFラインを効果的に突き、最後はトゥイランギがラックサイドからゴールラインに飛び込んだ。

9番・ヤングス、10番・フォード、12番・ファレルがニュージーランド陣のDFラインを把握し、空いたスペースにランナーを走らせ、効果的にキックで陣地を獲得し、終始ニュージーランド陣でのゲームを繰り広げた。

 

ニュージーランドは前半のボール支配率が4割、攻撃権を得るも外側を活かしたポッドシステムにはイングランドの手堅いDFが数多く立ちはだかり、内側でゲインを図るも、イングランドのサポート選手が早く、効果的な前進に繋がらない。

ラインアウトではイングランドがスティールを2回成功し、スクラムではなかなかクリーンに組めず、コラプシングを与えるきっかけにもなった。

ニュージーランドはアンストラクチャーから阿吽の呼吸での攻撃を繰り返すも、そこにもイングランドが素早く対応し、前半だけで9回のターンオーバーを許し、前半を0対10で折り返した。

 

後半、外側での攻撃を仕掛けたいニュージーランドは、FWからBKへのダブルラインシステムや10番・モウンガのループプレーからラインブレイクを試みるが、外側でコンタクトが起きてまず駆け寄るのがイングランドであり、ポッドシステムの綻びからニュージーランド勢のサポートが少なく、再三ターンオーバーを与えた。

またトゥイランギを筆頭に外側から覆い被さる様にDFラインを敷き、インターセプトや裏ラインへの展開に素早く対応出来ており、何よりボールキャリアーを取り囲む人数、集散やDFラインの粗密加減が大胆で精密であった事から、ニュージーランド攻撃機会を失う事が多く、インラインでの単体攻撃に頼る他なかった。

ニュージーランドイングランドラインアウトでのサインミスから7番・サヴェアが飛び込み、7点を返すのが精一杯だった。

 

思い通りにゲームが進まないニュージーランドはフラストレーションが溜まり、ラフプレーからペナルティを与えられる事もあり、自らチャンスを逸した点もあり、王者としてふさわしいプレーであったかは疑問である。

その点、イングランドはクリーンに、クレバーに、ニュージーランドを倒すためにダブルフライハーフが持つ外側展開を防ぎ、素早い玉出しにはFWが執拗に絡み続けてリズムを崩し、攻撃では非常にシンプルなアタックを繰り返し、ペナルティを得ればキックで得点を重ねた。

まさに『ニュージーランド攻略法』を見事に実践したかの様な闘い方であり、準備してきた作戦が見事にハマった結果であると言え、7対19でワールドカップでの直接対決では初めて、イングランドが白星を飾った。

 

ニュージーランドによる3連覇の夢は潰え、イングランドは世界ランク1位に躍り出、2度目の優勝へとあと1勝となった。

ニュージーランドはこれからもダブルフライハーフを主戦法としながら、アウトラインでの充実した展開力、そしてインラインでの破壊力を充実させるべく、FWやセンター陣のさらなる強化を図る事だろう。

またWTBの選手はまだまだ若く、11番・ブリッジや14番・リースが完全に封じられた事からも、さらなる経験を積み、人材の育成や発掘に乗り出す事だろう。

 

本日の準決勝での勝者がイングランドへの挑戦権を得るが、現時点でイングランドに隙が無いのは確かである。

展開力があるウェールズか、DF力とWTBに破壊力がある南アフリカか。

2023に想いを馳せながら、まだまだワールドカップは続く。