ぐるなBB

宮城県在住であるBBの主観が渦巻く日常観察バラエティ

ラグビー ワールドカップ2019『20191020準々決勝 南アフリカ対日本』

因縁の対決再び。

2015年イングランド大会にて世界では『ブライトン・ミラクル』、そして南アフリカでは『ブライトン・ナイトメア』と呼ばれた一戦で、日本は南アフリカから勝利し、世界に『Brave Blossoms』の名を轟かせた。

ワールドカップ直前に行われたテストマッチでは、南アフリカの鋭い出足DFと快速フィニッシャー達に成す術なく蹂躙され、南アフリカは勢いをつけてワールドカップに乗り込んだ。

 

日本はプールAにおいて、格上のアイルランドスコットランドを手厚いDF網と巧みなダブルラインアタック、安定で強力なセットプレーや鮮やかなパスワークで退け、史上初のプール首位・決勝トーナメントへ進出した。

南アフリカは初戦のニュージーランドに敗れこそしたものの、日本とのテストマッチで見せた強力DFでニュージーランドの攻撃の芽を摘み、また残り3試合は大勝に次ぐ大勝、プール最多トライという攻撃力も合わせてトーナメントに乗り込んできた。

日本はスコットランド戦ほぼ同様の布陣、リザーブにはヴァンピー、マフィ、そしてレメキを並べ、南アフリカも1番・ムタワリラを先発、世界最高クラスの9番・デクラーク、キックの精度も高い大型10番・ポラード、決定力の高い快速11番・マピンピ、鋭いステップでトライを量産した14番・コルビ、総合力の高い15番・ルルーを揃えた。

 

前半早々、日本は南アフリカの素早前進DFに対し、比較的空いた外側や裏側のエリアにキックを蹴り込み、ややギャンブルな形で前進を図ろうとするが、なかなかボールは通らない。

また、強いフィジカルを誇る南アフリカに対して突進を試みるも、瀬戸際で勝る相手に効果的なゲインライン突破や数的優位を作り出せず、ハーフウェイ付近での攻防が続いた。

しかし、日本陣地での南アフリカボールでスクラム南アフリカは1番側を持ち上げながらジリジリと進むと、スクラム後ろから左側へ移動した11番・マピンピに直接ボールが渡り、日本のタックルを交わし、弾き、先制トライを挙げ、テストマッチ同様にその決定力の高さを見せつけた。

その直後、1番・ムタワリラが日本の1番・稲垣をタックルした際に持ち上げてしまい頭から落とす格好になった事から、危険なタックルと認定されてイエローカードを受け、数的優位に立てた日本は、左サイドを華麗なパスワークでから11番・福岡が駆け上がるも、トライライン目前で南アフリカDFが鉄壁の様に立ちはだかりトライは奪えず、スクラムコラプシングからペナルティキックを追加するのみに留まった。

 

その後は、日本が実に8割のボール支持率で攻撃を繰り返すも、南アフリカは日本を研究し尽くした様に素早いDFに加えて9番・流や10番・田村、裏を走るBK陣にも鋭くプレッシャーを与えて効果的な攻撃をさせず、さらにはパワー溢れる姫野や爆発的スピードの福岡、松島にはそれぞれマンマークをつけて攻撃の芽を潰し続け、得点を奪わせなかった。

対する南アフリカは安定したスクラム、高さを活かしたラインアウトからの力強いモール、そして限られた攻撃チャンスで数的優位を作っては、ポラードを起点に外側へ展開してチャンスを作るも、15番・ルルーをはじめとしたあと一歩でのハンドリングエラーが響き、追加点が奪えないまま前半を終えた。

 

後半、南アフリカは前半同様の強固なDFに加え、日本のアタックが機能しなくなってると見るや否や、さらにプレッシャースピードを上げて襲いかかり、日本はキックで逃げざるを得ない形となった。

南アフリカはマイボールをキープする時間が増えると、4番・エツベスを中心に力強いFWをどんどんぶつけ、また未だ予選を通じて一度も失敗していないラインアウトから、モールでひたすらに前進して日本のFWを消耗させながら、時にキックで効果的に陣地を獲得していく。

そして日本はボールを確保する事が困難となり、ボール争奪場面での反則やラインオフサイド、ハイタックル等のペナルティを10番・ポラードが確実に決め、後半20分時点で14対3と日本は劣勢に立たされていた。

 

南アフリカは徹底してモールにこだわり、自陣側からでもモールで押し込み、日本陣地22mまで深く長く押し込むと、最後は抜け出した16番・マークスから9番・デクラークに予定していたかの様な落ち着いたオフロードパスが通り、南アフリカは待望の2トライ目を上げた。

その後も日本は交代したフレッシュな17番・中島、18番・ヴァル、19番・ヴィンピーといった体が大きな選手をぶつけるも、南アフリカのDFが崩れる事はなく、零れたボールを確保すると10番・ポラードが揃わない日本DFの隙間を駆け抜け、左側に正確なロングパスを放り、最後は11番・マピンピが絡まれながらも吹き飛ばし、ダメ押しのトライを挙げた。

フルタイムのホーンが鳴り、南アフリカは勝利が確定しているにも関わらず試合を切らずに攻め続けるが、最後は外に蹴り出し、日本の敗退が確定した。

 

総じて、南アフリカが全てに優れていた。

選手個人のフィジカル、スキル、スピード、リアクション、セットプレーでの安定感、ブレイクダウンでの争奪、そして相手のウィークポイントを執拗に攻める戦略の徹底ぶり、試合巧者と呼ぶにふさわしい素晴らしいゲーム運びだった。

準決勝はフランスを1点差で退けたウェールズと対戦、どうしても贔屓目に見て南アフリカ有利かと思ってしまうが、ここまで来たら実力は拮抗しているのかも知れず、来週もまだまだ目が離さないのである。

 

かくして日本はワールドカップから姿を消す事となるが、小柄な選手が大柄な相手に歯を食いしばって対抗し、嘲笑うかの様に翻弄し、歓喜の輪を広げる姿は、日本にも、そして世界にも勇気と感動を与えた事だろう。

ホスト国としての選手は元より、海外国を支えるファンや自治体や関係者の『オモテナシ』とも呼べる手厚いホスピタリティに、「JAPAN is COOL」の印象を持たせた事に違いない。

この印象が来年の東京オリンピックにも繋がり、世界に日本の素晴らしさをさらに認知していただければ、幸いであり、誇りである。