ラグビー大学選手権2018準決勝・帝京対天理
帝京7-29天理
帝京の大学選手権10連覇を阻んだのは、関西リーグ3連覇で乗り込んで来た天理であった。
天理の最大の強みは日本航空石川高校出身の外国人選手であり、そのフィジカルは鍛え上げた日本人のそれを圧倒的に凌駕し、帝京最大の痛手であった開始5分での10番交代にも影響している。
しかし、その外国人選手3人を主に置きながらも、他の12人の活躍も目覚ましく、王者・帝京に付け入る隙を与えなかったという印象を持つ。
特にスクラムでは帝京よりも平均体重で下回りながらも、主将の2番を中心に確固たる塊と化し、帝京からペナルティトライを始め、数々のターンオーバーを演じた。
またブレイクダウンでも帝京の2人目の寄りが遅いや否や、徹底的なスタンディングプレーでボールに絡み、日本で言う『ジャッカル』への試みやノットリリースザボールを誘発させ、攻撃権を奪取した。
帝京の2人目の寄りが遅かった要因としては、これまで9度の優勝を重ねてきた帝京の持ち味でもあるスピーディーなブレイクダウンと相手ディフェンスラインの穴を突く、巧みかつ柔軟なアタックフェーズが全く通用しなかった事が挙げられる。
その理由は天理のファーストタックラーのノミネートと勢い、そして精度が見事であり、帝京は完全に勢いを失ったのである。
勿論、10番を失った事も要因ではあるが、それより何より天理のディフェンスは素晴らしかった。
帝京主将のスタープレーヤー15番も、これまで幾度と無くチャンスを作り上げたその影は薄まり、ビッグゲイン1度だけの活躍に留まった。
天理のアタックの強みは、チームで決めた事への徹底ぶりにも現れている。
外国人で大学生のフィジカルでは収まりきらない13番を右サイドのポッドで利用し、少ない人数での優位性を出した。
また、スピードスターの14番も同側に備わせ、2枚刃での厚みのある攻撃力を遺憾無く発揮する。
そしてFWもBKも皆スペースを見つけて縦横無尽に走り回り、ビッグゲインが期待出来る時でもオフロードパスはせず、確実なブレイクダウンと球捌きでチャンスの芽を踏み潰さない。
唯一、13番が相手のハンドリングエラーからゴール前までビッグゲインするもののトライ直前で帝京の14番に阻まれ、焦ってオフロードパスをした結果ノックオンに繋がっている。
そうした事を教訓にしながら、天理は自分達の強みを十二分に活かし、帝京の得意とする展開に持ち込まさせず、闘い抜いたのだ。
決勝へと駒を進めた天理。
現時点でその強さは疑う余地も無く、黒い軍団が笑う画を想像してやまない。