ぐるなBB

宮城県在住であるBBの主観が渦巻く日常観察バラエティ

ラグビーワールドカップ2019『20191019準々決勝 ニュージーランド対アイルランド』

世界ランク1位、前回・前々回大会優勝しているニュージーランドと、過去最高ベスト8ながら、史上最高チームを仕上げた世界ランク4位のアイルランドとの対戦。

ニュージーランドは“ダブルフライハーフ”という新たな戦術で世界を席巻し始めるが、アイルランドも2018年世界最優秀選手のセクストンを擁し、2015年以降の直接対決ではアイルランドが勝ち越しており、これが事実上の決勝戦とも揶揄されるゲームである。

ニュージーランドの3連覇を阻むのはアイルランドだろうという予想が多く、その通りに駒が進めば決勝戦で相対するハズであったが、日本の大躍進によりアイルランドはまさかのプールAを2位通過、プールBにて南アフリカとの死闘を制し、順当に1位通過したニュージーランドとの対戦は、準々決勝に早まってしまったのだ。

 

ニュージーランドはほぼベストメンバー、肩の怪我で出場機会を失っていた4番・レタリック、5番・ホワイトロック、そして10番・モウンガと15番・バレットのダブルフライハーフ、BKには11番・ブリッジ、12番・ALB、13番・グッドヒュー、14番・リースと非常に若く、2015年大会においてメンバー入りしていなかったメンバーばかりである。

アイルランドもほぼベストの布陣、124キャップ目となる2番・ベスト、ヒーリーとファーロングの巨漢プロップ、8番は不動のスタンダー、9番・マレー、10番・セクストンの世界最強コンビ、BKはニュージーランドとのテストマッチで勝ち越しトライを挙げた11番・ストックデールをはじめ、13番・リングローズらと、若くも実力のある選手を揃えた。

ニュージーランド台風19号の影響でイタリア戦が中止、ナミビアとカナダはテスト的なゲームで疲労はほとんど無さそうだが、アイルランドスコットランド、日本とタフな試合が多く、主力の怪我と疲労が不安要素となる。

 

前半はほとんどニュージーランドのペースでゲームが進み、スコアで見れば衝撃の22対0であった。

ニュージーランドはモウンガ、バレットが起点となって左右に広く攻撃を仕掛け、ALBは縦に、グッドヒューは横と裏にボール運び、リースとブリッジは鋭く駆け回る。

FWのハンドリングやランコースでも着実にゲインラインを割り、進んだところを9番・アーロンがスペースを見つけて2本飛び込み、パスミスから転がったボールをモウンガ、バレットが蹴り進み、3本目のトライを挙げた。

アイルランドは手堅いDFで食い止めようとするも、僅かに綻びが生まれ、セクストンがいて初めて機能する3-3-1ルーパーシステムもニュージーランドのDFに阻まれ、センター陣が怪我等にて離脱したのも痛手だった。

 

後半、アイルランドニュージーランドの攻撃を防ぐため、DFラインを早めに挙げ、プレッシャーを与えて攻撃の選択肢を狭めようとするが、ニュージーランドは横への攻撃を縦に、パスの回数を減らして愚直に前進を試み、最後は8番・リードの優しいオフロードパスを2番・テイラーがゴール中央に沈めた。

その後はアイルランド陣側での攻防が続き、キックの精度やパント処理で優位に立つニュージーランドが依然として試合を支配する中、ラインアウトモールで10m程度前進した後、モウンガの絶妙なスピーディーキックパスを14番・リースが受け、最後は変わった20番・トッドがトライを決めた。

後半20分、34対0とアイルランドは未だ無得点であるが、キャプテンのベストがここで交代、大観衆の歓声と拍手に包まれる中、『負けたら引退』というピッチを後にする。

 

その後、アイルランドは11番・ストックデールの前進からエリアを獲得し、ニュージーランドに猛攻を仕掛け、ペナルティのアドバンテージを得た状態でDF裏へのパントを12番・ヘンショーがこぼして初トライのチャンスを逃すが、続くマイボールスクラムから8番・スタンダーの突進と12番・ヘンショーがシザース、今度はガッチリ抱えたヘンショーがゴール真下にトライした。

ここから反撃したいアイルランドだが、オールブラックスは22番・SBWをはじめとしてブレイクダウンする前に繋ぐオフロードパスが活き、アイルランドのDFラインが徐々に綻び出すと、12番・ALBのラインブレイク、またゴール前でターンオーバーすると6番・サヴェア、16番・コールズ、そして11番・ブリッジとオフロードパスが華麗に繋がり、ダメ押しトライを挙げた。

しかしアイルランドも意地を見せ、ニュージーランド陣深くに蹴り込んで陣地を奪い、強力FWが息を吹き返した様に攻め入ると、最後はゴールポスト目掛けて飛び込むのを20番・トッドが体を張って阻止するが、タックルの理念にそぐわないためにペナルティトライの判定、トッドはイエローカードを受けた。

 

試合時間も残り3分となったが、相変わらず攻め続けるニュージーランドは敵陣深くのスクラムから21番・ペレナラ、15番・バレットと速いロングパスでアイルランドDFが対応出来ない位置までボールを運ぶと、最後は突進する事でDFを引き付けたバレットが弟である23番・ジョルディにさらにロングパス、1人少ないにも関わらずダメ押しのダメ押しトライを決め、フルタイムとなった。

46対14と、まさかここまでスコアが開くとは思ってもみなかったが、それだけ個、そしてチームの力の差があった事の現れかと思われる。

これで準決勝はイングランドニュージーランド、直前の対決では雨の中で引き分けに終わっているが、完成度の高さでどちらが勝ってどちらが退くか、素晴らしい闘いがまだまだ続くのである。