ラグビーワールドカップ2019『20190929 ウェールズ対オーストラリア』
予選プールDの最注目カード、世界ランク2位のウェールズと6位のオーストラリアとの対戦である。
ウェールズは前回大会ベスト8、直近の6ネーションズ(イングランド、アイルランド、スコットランド、ウェールズ、フランス、イタリア)で勢いを回復してきたイングランド、ニュージーランドを完璧に抑えたアイルランドをも倒して全勝優勝を果たし、短期間ではあるが世界ランク1位にもなった。
オーストラリアは過去優勝2回、前回大会もニュージーランドに破れはしたものの準優勝、この4年間はスーパーラグビー(南半球プロリーグ)での低迷もあって成績は振るわなかったが、ブレディスローカップ(ニュージーランドとの対戦)でも数試合ぶりに勝利し、前戦ではフィジーも下し、勢いは増してきていた。
ウェールズは9番・Gデービスと10番・ビガーを中心にボールを外側に大きく展開し、裏のスペースには高いパントを上げて積極的に争奪する、前・横にボールを動かすラグビーが魅力であり、BKには若手とベテランが融合した実力者が揃っている。
オーストラリアもBKにはスピーディーでパワフルなランナーが揃い、12番・ケレビ、代表復帰の13番・オコナーらに9番・ゲニアと10番・フォーリーがボールを素早く供給し、ブレイクダウンで活躍する6番・ポーコック、7番・フーパー(キャプテン)らを中心にアップテンポな攻撃を続ける。
どちらも展開力に自信を持つため、FW対FW、BK対BKの直接対決でどちらに軍配が上がるかが見ものであった。
試合は開始早々、ウェールズ10番・ビガーが40秒でドロップゴールを決めて先制する。
その後は再びビガーが右奥へキックパスを図り、空中戦を競り合った12番・パークスがそのままゴールに飛び込んだ。
ゲーム序盤からウェールズがFWの縦突破とBKの横展開を駆使し、主導権を握る。
しかし、オーストラリアも素早いボール展開で連続攻撃を仕掛け、12番・ケレビが再三ウェールズDFラインの穴をこじ開ける。
内に寄ったDF網を見ては、アドバンテージを得たオーストラリアの10番・フォーリーが対抗するかの様なキックパス、14番・アダムが巧みなキックキャッチとステップで切り込み、グラウンディングした。
アダムも前回大会で代表引退を表明したが、日本の神戸製鋼でパフォーマンスを発揮する中、再び代表に返り咲き、敵を欺くその動きは前回大会と遜色ない様であった。
一進一退を思わせる攻撃の応酬だったが、優位に立ったのはウェールズだった。
オーストラリアの早い球出し展開に対し、ウェールズは外側のDFラインを上げて間合いを詰め、オーストラリアのハーフ団から選択肢と時間を奪い、攻撃での前進やサインプレーを防がれた。
挙句、ウェールズの9番・Gデービスにハーフからのパスをインターセプトされ、痛い追加点を奪われた。
そして10番・ビガーは怪我で前半に交代するが、22番・パッチェルのキックは素晴らしかった。
前回大会で忙しなく動く独特のキックルーティンから90%以上の高確率でゴールを決めたビガーの右脚は、今回はゴール正面を外したり、今ひとつ精度に欠けていたが、パッチェルのキックは非常に正確で、ペナルティゴールやコンバージョンを悉く決め、23対8で折り返すと、後半3分にはビガー顔負けのドロップゴールを決めた。
オーストラリアのDFは非常に固く、5番・ジョーンズキャプテンや快速15番・ウィリアムスらが縦への突破を図るが、ボールキャリーはオーストラリアの半分ほどであり、如何にDF力が優れていたかが分かる。
オーストラリアもペナルティや突破で敵陣ゴール深くまで攻め入ると、6番・ポーコックのオフロードパスから最後は15番・ペティが決め、またポイントサイドの連続攻撃にてウェールズゴールに迫り、最後は7番・フーパーキャプテンがねじ込んだ。
トライ数ではウェールズを上回り、点差も26対25と1点差まで詰め寄るが、やはりウェールズ22番・パッチェルがPGを決め、万事休す。
FW同士、BK同士の対決はほぼ互角の様に思えたが、アタックとDF共に対策を講じ、少ない特点チャンスを効果的に物にしたウェールズに軍配が上がったのだろう。
グループDはおそらくこの2国が決勝トーナメントへ進む事だらう。
ビガーらの怪我は気になるが、若手の台頭で層が厚いウェールズ、ベテラン勢がまだまだ元気のオーストラリア。
決勝トーナメントは“死のプール”と呼ばれるプールCを勝ち上がってきた2国との対戦、どちらも目が離せない。